ビニールハウス冬の温度管理で暖房費を削減する省エネ対策10選!保温性向上と効率的な加温技術を徹底解説

ビニールハウス冬対策

ビニールハウスの冬の温度管理は、冬越しする作物の生育や暖房コストに直結します。冬場は日中の太陽熱で一時的に温度が上がる一方で、夜間は放射冷却で急激に冷えるため温度差が生じやすく、温度を上げる・保つための断熱シートやヒーターの選択、暖房の自作や導入の方法を含めた総合的な対策が求められます。この記事では「ビニールハウスの気温は何度まで上がりますか?」「ビニールハウスの冬の対策は?」「ビニールハウスを温める方法はありますか?」といった基本疑問に答えつつ、いちごなどの冬越しに関する具体的ポイントや温度差対策までわかりやすく解説します。ビニールハウスを使うと外が寒い時期でも植物を育てることができるのはなぜ、という仕組みも含めて整理します。

記事のポイント
  • ビニールハウスの冬期に起きる温度の特徴を把握する
  • 費用と効果を比較した保温・加温の方法を理解する
  • 断熱シートやヒーターを使った省エネ運用の実務ポイントを確認する
  • いちごなど代表作物の冬越し管理の注意点を学ぶ

 

Contents

  1. ビニールハウスで冬の温度の基礎
    1. ビニールハウスの気温は何度まで上がりますか?
      1. 気温上昇の主な決定因子(実務視点でのチェック項目)
      2. 作物に与える影響と管理目標の立て方
      3. 実務で使える「必要暖房能力」の概算法(計算式と例)
      4. 過昇温(オーバーヒート)を避ける運用技術
      5. 夜間に外気より低温になる条件(放射冷却の注意点)
      6. 監視と運用のチェックリスト(短期アクション)
    2. 管理で冬の温度のチェックポイント
    3. 温度差を解消する方法
      1. 温度ムラの原因を整理する
      2. 対策1:循環扇(サーキュレーター)の導入と配置設計
      3. 対策2:温風ダクト・配管での均等送風
      4. 対策3:被覆・断熱で放熱を抑える
      5. 対策4:測定・診断と改善のPDCAサイクル
      6. 配置例と簡易設計ガイド(実例)
      7. まとめ:組合せで効果最大化
    4. 温度を上げるための基本施策
    5. 冬越しといちごの温度管理
  2. ビニールハウスで冬の温度の省エネ対策
    1. 断熱シートで保温を強化
    2. ヒーターと暖房の自作の比較
      1. 市販ヒーター(灯油・軽油・LPG・電気式など)の特徴と運用ポイント
      2. 自作・補助的加温(蓄熱ボトル、発酵熱、太陽+電気併用等)の特徴と実務的導入指針
      3. 比較表:市販ヒーター vs 自作補助(実用判断の観点)
      4. 実務的な導入フローと運用チェックリスト
    3. ビニールハウスを温める方法はありますか?
    4. ビニールハウスの冬の対策は?
      1. 1. 保温対策(まずは熱を逃がさない)
      2. 2. 加温対策(必要なときに必要な熱を供給)
      3. 3. 換気と湿度管理(結露と病害を抑える)
      4. 4. 結露対策(被害の未然防止)
      5. 5. 雪対策と構造管理(積雪地域での設計と運用)
      6. 6. 実務チェックリスト(季節前/冬期運用)
      7. 7. 費用対効果と運用の考え方
    5. ビニールハウス冬の温度まとめ
      1. 🛒 ビニールハウス冬の温度管理におすすめの栽培グッズ一覧

ビニールハウスで冬の温度の基礎

  • ビニールハウスの気温は何度まで上がりますか?
  • 管で冬の温度のチェックポイント
  • 温度差を解消する方法
  • 温度を上げるための基本施策
  • 冬越しといちごの温度管理

ビニールハウスの気温は何度まで上がりますか?

ビニールハウス内の気温は「屋外の気温」だけで決まるわけではなく、太陽放射、被覆材の透過率と断熱性、ハウスの熱容量(地面や貯熱体の蓄熱量)、換気状況など複数要因が組み合わさって決まります。冬期の晴天では、外気が5℃前後でも日中に20〜30℃程度まで上昇するケースがよく見られます</strong)。これは透過した日射がハウス内の地表や床面で熱に変わり、その熱が赤外線として再放射される際にビニール等が熱を逃がしにくくする「温室効果」によるものです。

ポイント日射が強く、かつ換気が行われない条件では短時間で大幅に上昇する一方、夜間は放射冷却で急降下するため、昼夜の管理差が生じやすい点に注意してください

気温上昇の主な決定因子(実務視点でのチェック項目)

日射量晴天か曇天か、季節と時間帯で変動し、温度上昇の根本要因になる

被覆材の透過率・透過スペクトル:光をどれだけ透過するかで暖まり方が異なる(多層フィルムは透過性が低くなる傾向)

断熱性・気密性内張りや裾部シーリングの有無で夜間の温度保持能力が変わる

熱容量(地温・蓄熱体)重い蓄熱体(水タンク、土壌)は昼間に熱を蓄え夜間に放出し、温度変動を緩和する

換気・風開放・送風があると上昇温度は抑えられるが、湿度管理や換気は病害対策で必須

作物の被覆(葉面)密植や葉の高さで空間の熱分布が変わる

作物に与える影響と管理目標の立て方

単に内部温度が高いことが良いとは限らず、作物ごとに「適温範囲」があり、その範囲を逸脱すると光合成低下、花芽障害、受粉不良などの障害が生じます。例えば一般的な目安として、葉菜類は比較的低めの温度域を好む一方、果菜類はやや高めの温度で生育が進みます。栽培する品目の昼夜の目標温度を設定し、ハウスの熱収支をその目標に合わせて設計・運用することが重要です(作物別の詳細な生育適温は公的資料等で確認してください)。

補足作物別の生育適温や夜間の最低温度については農林水産省の資料など一次情報で確認すると具体的な数値が得られます(出典:農林水産省「施設園芸における省エネルギー対策マニュアル」)

実務で使える「必要暖房能力」の概算法(計算式と例)

加温が必要か、必要ならばどの程度の暖房能力が要るかを判断する際は、ハウスの熱損失を見積もって機器容量を決めます。代表的な考え方は次の式です:
Q(必要暖房出力, W)= U(熱貫流率, W/m²K) × A(被覆面積, m²) × ΔT(設定温度と外気の温度差, K)
ここでUは被覆材・構造・断熱状態によって変わるため、正確には現地での推定が必要です。例として仮にA=100m²、U=5 W/m²K、ΔT=15Kとすると、Q=100×5×15=7,500 W(約7.5 kW)となります。この値に安全係数(一般に10〜20%)を乗じてヒーター容量を選定します。7.5 kW は熱量換算で約6,450 kcal/h(1 W ≒ 0.85985 kcal/h)に相当しますので、製品表示の単位に注意して比較検討してください。

実務のヒントまずは被覆の気密化と内張りでU値を下げる(熱損失を削減)ことが、暖房設備の小型化・省エネ化に最も効果的です

過昇温(オーバーヒート)を避ける運用技術

晴天の短時間で内部が急上昇すると、葉焼けや蒸散ストレス、花落ちが起きやすくなります。対策としては次が有効です。側面巻き上げや天窓開放といった自然換気、サーモスタット連動の自動ベント、遮光ネットや遮光塗布(昼間の直射を抑える)、ミストや蒸発冷却の導入(湿度上昇に注意)などです。導入時は「自動化(温度連動)」で運用することで人的ミスを減らし、過昇温リスクを低減できます。

夜間に外気より低温になる条件(放射冷却の注意点)

晴れた乾燥日、無風の夜は地表からの放射冷却が進み、ハウス内の夜間温度が外気よりも低くなることがあります。これはハウス表面や地表が宇宙空間に向けて効率よく熱を放出するためで、特に単層被覆で内張りが無い場合に発生しやすい現象です。対策は内張りカーテンや二重被覆による放射熱の反射・保持、地中蓄熱や水タンクによる蓄熱導入などです。

監視と運用のチェックリスト(短期アクション)

  • 日中と夜間に複数点(生長点付近、床面、ハウス天井)で温度を測定する
  • 晴天時の最高温度と夜間最低温度の差を把握し、対策の優先順位を決める
  • ベントや遮光、ヒーターの自動制御設定値を作物別に記録・標準化する
  • 暖房容量の算出には熱損失見積(上の式)を用い、余裕(10〜20%)を確保して機器を選ぶ

(出典:農林水産省「施設園芸における省エネルギー対策マニュア

管理で冬の温度のチェックポイント

冬期における温度管理の精度は、どの作物にとっても収量と品質を左右する要因となります。管理においてまず大切なのは、ハウス内のどこで温度を測るかです。一般的に生長点や花房付近の高さで計測するのが望ましく、床面や天井付近の温度だけを見て判断すると誤差が大きくなります。温度計やセンサーは複数台設置し、異なる位置のデータを比較することで空間のムラを把握できます。 さらに忘れがちなのが「地温」です。根の生育環境が冷えすぎると水や養分の吸収が低下し、地上部の成長が止まる場合があります。そのため、特に高設栽培や水耕栽培では空気温度だけでなく培地温度や地温を同時に監視することが効果的です。 機器面では、防水性能や耐候性を備えた農業用の温湿度センサーを選定することが望ましいとされています。市販の一般用センサーは精度が不足する場合があり、校正機能やデータロギング機能を持つものを利用すれば記録と分析がしやすくなります。日々の温度記録をグラフ化し、気象庁データなど外部気象条件と突き合わせることで、異常値の早期発見や対策検討につながります。

補足最低温度の推移を重点的に記録すると、夜間の断熱対策や加温計画の改善に直結します

(出典:農林水産省「施設園芸における省エネルギー対策マニュアル」

温度差を解消する方法

ビニールハウス内の「温度ムラ(上下や面での温度差)」は、作物の生育不均一や品質ばらつき、無駄な燃料消費につながるため、早めに把握して対処することが重要です。温度差を解消する基本は(1)空気の均一な循環を作ること(2)放熱を抑えて熱を下層に保持することの二本立てです。以下では原因の整理から、実務で使える具体的手法、機器選定と配置の目安、測定と検証の手順までをわかりやすく解説します。

温度ムラの原因を整理する

  • 上層に暖気が滞留し、下層(作物高さ)との間で温度差が発生する(熱の層化)
  • 暖房の熱供給が局所的で、熱が均等に広がらない(ヒーター直下の過加温)
  • 換気や風の流れが不十分で局所的な停滞空間ができる
  • 被覆材の断熱不足や裾からの冷気侵入で端部が冷える

チェック目安夜間の天井と作物高さで温度差が2〜3℃以上なら温度ムラの改善が必要と判断するとよいです(実務目安)

対策1:循環扇(サーキュレーター)の導入と配置設計

循環扇はハウス内の空気を撹拌し、層化を解消する最も手軽で効果的な手段です。ポイントは「風速の目標」「設置高さと角度」「扇の能力と間隔」の3点を設計することです。作物上方の平均風速は0.2〜0.3 m/sを目安に設定すると、換気や蒸散ストレスを大きく与えずに温度を均一化できます。連続的に0.5 m/sを超える風を当てると葉面乾燥や生育阻害を招く可能性があるため注意してください。

設置高さ・向き作物の天頂部から約0.8〜1.5 m上、やや下向き(15〜30度)に設置すると、作物層を水平にかき混ぜられます

間隔の目安小型ハウスでは床面積25〜50 m²ごとに1台、中~大型ハウスでは扇の能力に応じて8〜15 m間隔で配置するのが一般的です

能力の選定一般的な循環扇の風量は2,000〜15,000 m³/h程度。ハウス規模に合わせて、メーカーの「到達距離(throw)」「風量」「消費電力」を確認して選定してください

可動式・首振り首振り機能や可変速は季節や作物段階に合わせた微調整に有効です

対策2:温風ダクト・配管での均等送風

暖房機を使う場合、ヒーター直近に暖気が偏ると局所加温になります。これを避けるため、温風をダクトで分配し、低い位置(作物近傍)から均一に送る設計が効果的です。ドリップ式の孔あきダクト(パーフォレーテッドダクト)を用いると一定の長さに均等に温風を放出でき、局所的な熱スポットを防げます。

  • ダクトは断熱し、熱ロスを減らす
  • ダクト出口は等間隔に配置し、同一方向の気流を作る
  • 風速が高すぎると作物ストレスになるため出口風速は0.3〜0.6 m/sを目安に調整する

対策3:被覆・断熱で放熱を抑える

夜間の放射冷却対策として内張りカーテン、断熱シート、二重被覆(空気層を持つ複層フィルム)を導入すると、天井に滞留している熱を下層へ保持しやすくなります。これにより循環扇だけで解消できなかった上下差が抑えられ、暖房負荷自体も低下します。ただし採光低下や結露リスクもあるため、資材の選定(透光率、透湿性)と運用(昼夜での開閉運用)設計が重要です。

注意点断熱化で採光が不足すると光合成に悪影響を及ぼすため、日照量が少ない季節は特に採光スペックを確認すること。

対策4:測定・診断と改善のPDCAサイクル

実効的な改善には「測る→設計する→試す→評価する」のサイクルが欠かせません。推奨される手順は以下の通りです。

  1. 温度センサーを複数箇所(天井近く、作物高さ、床面)に設置して24時間の温度分布を記録する
  2. 温度差の大きい箇所(端部、天井下、ハウス中央など)を特定する
  3. 循環扇の配置や温風ダクトの改良で気流をシミュレーションまたは小規模テストし、効果を確認する
  4. 改善後は同じ計測を行い、天井と作物高さの温度差が目標(例えば1〜2℃以内)に収まるか評価する

実務の目安循環扇を使用する際は作物上での平均風速を0.2〜0.3 m/sに保つことが推奨されます。具体的な風速はハウスと作物により微調整してください

配置例と簡易設計ガイド(実例)

例1:幅6m×長さ30m(床面180 m²)のハウスの場合、循環扇(到達距離10〜12 m、風量5,000〜8,000 m³/h)を通路両側に等間隔で3〜4台設置すると均一な撹拌が期待できます。ファンは作物から約1.0〜1.2 m上に取り付け、やや下向きに調整します。
例2:ミニハウス(幅3m×長さ6m)の場合は1台の小型循環扇(風量1,000〜3,000 m³/h)で十分な場合が多く、扇を長手方向に向けて設置すると効率的です。

まとめ:組合せで効果最大化

温度差解消は単一の対策で完結することは稀で、循環扇による空気撹拌+ダクトによる均等送風+断熱での放熱抑制+測定による検証を組み合わせることで最大の効果が得られます。初期は簡素な循環扇導入と測定から始め、効果に応じてダクトや断熱を段階的に拡張するのがコスト対効果の面でも現実的です。

(出典:農林水産省「施設園芸における省エネルギー対策マニュアル」および実務ガイドライン)農林水産省マニュアル

温度を上げるための基本施策

冬のビニールハウスでは、外気温との差が大きいため加温が欠かせない場合があります。温度を上げる方法は大きく二つに分けられます。「保温により失われる熱を減らす方法」と「加温によって新たに熱を供給する方法」です。前者には内張りカーテン、二重フィルム、断熱シートの利用があり、比較的導入コストが低く、省エネ効果が持続するのが利点です。後者には灯油式ヒーターや電気式温風機、ヒートポンプの導入があり、即効性が高い反面、燃料や電気のコストが継続的に発生します。 内張りカーテンはハウス内部にもう一枚の膜を張ることで空気層を作り、夜間の放射冷却を抑えることができます。断熱シートは光透過率が資材によって異なるため、光合成に必要な日射量を確保しつつ導入することが重要です。一方で加温装置は必要な時に必要なだけ温度を上げられる点が強みであり、特に開花期や結実期の低温リスクを回避する際に有効です。 また、温度管理を効率化する上では複数の施策を組み合わせることが推奨されます。例えば、内張りカーテンで保温性を高めた上で小型ヒーターを使用すれば、大型の加温設備を常時稼働させるよりも燃料費を削減できます。さらに、近年では太陽熱を蓄熱槽にため込み夜間に放出する「地中蓄熱システム」や、ヒートポンプを活用した再生可能エネルギー型加温も導入が進んでいます。これらは初期投資が高いものの、長期的な省エネ効果に優れると評価されています。

方法 効果の即効性 導入コストの目安 向く規模
内張りカーテン・断熱シート 中(夜間の放熱を抑える) 低〜中 小〜中規模ハウス
灯油式ヒーター(業務用) 高(速やかに加温可能) 中(燃料費が継続発生) 小〜中規模
ヒートポンプ等の電気機器 高(制御性良好) 高(初期投資) 中〜大規模

(出典:農林水産省「施設園芸における省エネルギー対策マニュアル」

冬越しといちごの温度管理

いちごは冬期において代表的な施設園芸作物であり、その温度管理は品質や収量に直結します。特に高設栽培では培地が外気と接する面積が広いため地温が下がりやすく、地温管理を軽視すると根の活性が低下して花芽の分化や果実肥大に悪影響を及ぼす可能性があります。一般にいちごの生育適温は昼間20℃前後、夜間10℃程度とされますが、過度の低温は花芽不良や奇形果の増加につながるため注意が必要です。 また、開花期から結実期にかけては特に温度管理が重要になります。花粉の発芽や受粉は気温が低すぎると不良になりやすく、果実形成に支障をきたすことがあります。そのため、夜間の気温が5℃を下回る恐れがある地域では、ヒーターや二重被覆による保温が欠かせません。加えて、昼間に急激に温度が上昇すると葉焼けや蒸散過多のリスクがあるため、換気や遮光を適切に行う必要があります。 栽培現場では、加温設備だけでなく防霜ファンや不織布の被覆を活用する例も多く、コストを抑えつつ必要な温度を確保する工夫が求められます。いちごの品質を高く維持するには「日中に温めすぎないこと」「夜間に冷やしすぎないこと」の両立が肝心であり、このバランスを保つことで糖度や果実サイズ、収穫量の安定が実現します。

(出典:農林水産省「果菜類・花き類等の生育適温一覧」

ビニールハウスで冬の温度の省エネ対策

  • 断熱シートで保温を強化
  • ヒーターと暖房自作の比較
  • ビニールハウスを温める方法はありますか?
  • ビニールハウスの冬の対策は?

断熱シートで保温を強化

ビニールハウスの冬期省エネ対策の第一歩として導入されやすいのが断熱シートや内張りカーテンです。これらは夜間の放熱を抑制し、内部の温度低下を緩やかにする役割を果たします。特に外気温が氷点下近くまで下がる地域では、断熱シートの有無でハウス内の最低気温に数度以上の差が出ることが実証されています。 二重被覆や多層フィルムは断熱効果が高い一方で、光透過率が下がりやすいのが欠点です。冬場は日照時間が短くなるため、光が不足すると光合成効率が落ち、収量や品質に影響する可能性があります。そのため、導入に際しては断熱性能と採光性のバランスを評価することが不可欠です。 最近では、赤外線を反射しやすい特殊フィルムや透湿性を備えたシートも開発されており、結露対策を兼ねて使用されるケースが増えています。結露は病害の原因となるため、単に温度を上げるだけでなく湿度環境の改善を意識した資材選びが重要です。導入コストは比較的低く、広い面積のハウスでも比較的容易に設置可能であることから、最も費用対効果の高い省エネ手段のひとつとされています。

ポイント断熱強化は「温度確保」と「湿度管理」の両方を考慮して導入することが成功の鍵となります。

ヒーターと暖房の自作の比較

ビニールハウスの加温手段は大きく分けて「市販の加温機器(業務用ヒーター等)」と「自作や低コストの補助的手法」に分類され、それぞれ得意分野と制約が明確です。市販機器は短時間で必要な温度を確保できる即効性と温度制御性が強みで、広い面積や悪天候時の安定運用に向きます。一方で燃料費や電気代といったランニングコスト、排ガス・排熱に伴う安全対策や定期的な点検・整備が必須であり、経営計画に燃料価格変動リスクを組み込む必要があります。自作・補助手法は初期投資を抑え、再生可能エネルギーや廃熱利用と親和性が高い反面、出力が限定的で制御性や信頼性で市販機器に劣る点に留意が必要です。

要点大規模・商用運用は「市販ヒーター+断熱強化+制御」、小規模・補助運用は「断熱+蓄熱・廃熱利用+補助ヒーター」の組合せが実務的に有効です

以下に、各方式の特徴・運用上の留意点・現場での活用例を掘り下げて解説します。導入判断では「必要な加温量(目的温度とハウスの熱損失量)」「ランニングコスト」「安全管理体制」「保守・点検能力」を総合的に比較検討することが肝要です。

市販ヒーター(灯油・軽油・LPG・電気式など)の特徴と運用ポイント

メリット高出力で即効性があり、サーモスタットやタイマーで温度制御が容易。大面積や厳寒時の凍害防止に有効

デメリット燃料費・電気代が継続的に発生する/不完全燃焼による一酸化炭素リスクがある/排気・設置に伴う安全基準の順守が必要

運用上の留意点燃料の品質管理(不純物混入防止)、給排気の確保(燃焼に必要な酸素確保)、定期的な点検(ノズル、燃焼室、煙突)と年次整備を実施すること

制御の工夫ゾーン暖房(ハウスを複数区画に分け必要箇所のみ加温)や夜間だけの短時間加温、外気温に応じたPID制御の導入で効率化が可能

注意燃焼式ヒーター使用時は必ず一酸化炭素(CO、無色無臭の有毒ガス)検知器を設置し、換気ルートを確保してください。メーカーの取扱説明書と地域の安全基準に従って運用することが必須です

自作・補助的加温(蓄熱ボトル、発酵熱、太陽+電気併用等)の特徴と実務的導入指針

自作系手法には蓄熱ボトル(ペットボトルやドラム缶に温水を入れて昼間の熱を蓄える)、コンポスト発酵熱の利用、昼間の太陽熱を蓄える黒タンク・蓄熱槽、太陽光発電と小型電気ヒーターの併用などがあります。これらは初期費用が低くランニングコストを抑制できる、環境負荷が比較的小さいという利点がありますが、出力密度が低く短時間での温度回復力が弱い点が最大の制約です。

設計のポイント蓄熱の有効性は「熱容量(質量×比熱)」と「温度差(蓄熱時のΔT)」で決まります。蓄熱タンクの設置位置は作物群の近傍で放熱損失を抑えることが重要

運用の現実性凍結防止や夜間の微温維持には有効だが、氷点下の長期冷え込みを単独で防ぐのは難しいため、補助的な加温手段との併用が推奨される

安全面水タンクやドラムの破損防止、発酵床の管理(通気と発熱の継続管理)など保守の手間はある程度必要

比較表:市販ヒーター vs 自作補助(実用判断の観点)

評価項目 市販ヒーター 自作・補助方式
即効性 高:短時間で昇温可能 低〜中:蓄熱や発酵を待つ必要あり
制御性 高:サーモスタットで精密制御可能 低:温度管理は難しく出力調整が限定的
導入コスト 中〜高(機器と設置) 低(既存資材の流用が可能)
ランニングコスト 中〜高(燃料・電気) 低(燃料依存度が低い場合)
安全性 要対策(排ガス・CO・火災リスク) 比較的安全だが管理不足で衛生・火災リスクあり
適用規模 小〜大規模まで対応可 主に小〜中規模の補助的運用向け

実務的な導入フローと運用チェックリスト

  • 1) 必要な加温量の推定:目標温度と外気条件からハウスの熱損失量を算出する
  • 2) 断熱優先:内張りやシート張替え等で先に熱損失を削減する
  • 3) 加温方式の選定:即時性が必要なら市販ヒーター、補助目的なら蓄熱等を選択
  • 4) 安全対策の実装:CO検知器、換気経路、燃料保管の遵守事項を確保する
  • 5) 運転と記録:燃料消費量と温度ログを記録し、コスト対効果を定期評価する

運転コストの簡易計算式は次の通りで、機器選定や投資回収の試算で活用できる:
運転コスト(円)=燃料消費量(L/h)×単価(円/L)×運転時間(h)。電気式の場合は消費電力量(kWh)×電力単価で同様に算出する。これらの実績値を季節ごとに蓄積すると、機器更新や制御改善の判断材料となる。

(出典:農林水産省「施設園芸における省エネルギー対策マニュアル」

ビニールハウスを温める方法はありますか?

ビニールハウスを温める方法にはいくつかの選択肢があり、それぞれに適した規模や用途があります。基本的には以下の3つが代表的です。

  • 燃焼式加温(灯油ヒーター・ガスヒーター)
  • 電気式加温(電熱線・ヒートポンプ)
  • 自然エネルギー利用(太陽熱蓄熱・発酵熱など)

燃焼式は即効性があり、外気温が極端に低い場合でも安定して温度を確保できますが、燃料コストとCO₂排出の課題があります。電気式は制御性に優れ、特にヒートポンプは高効率で環境負荷も低いですが、導入コストが高額です。自然エネルギー利用は持続可能性に優れるものの、外気条件に左右されやすく、単独での使用では十分な加温が難しい場合があります。 したがって、実用的には「複数の方法を組み合わせて利用する」ことが現実的です。たとえば、昼間に太陽熱を利用してハウスを暖め、夜間はヒーターで最低温度を維持する、といった運用が推奨されています。

ビニールハウスの冬の対策は?

冬期のビニールハウス管理は単に「暖めれば良い」だけではなく、保温・加温・換気・結露防止(+地域特有の雪対策)を組み合わせて運用することが安定生産の鍵となります。これらは互いに影響し合うため、各対策をバラバラに行うのではなく「熱収支(入る熱と逃げる熱)」と「湿度管理(結露と病害)」を同時に最適化する視点が必要です。本項では、実務で役立つ具体的な手法、設置・運用上の留意点、点検・保守の実務チェックリストまで、現場で使える詳細なガイドを提示します。

1. 保温対策(まずは熱を逃がさない)

保温は省エネ対策の第一歩です。代表的な手法として内張りカーテン、二重被覆(ツインフィルム)、断熱シート(アルミ蒸着や発泡系)、裾部の気密処理などが挙げられます。内張りカーテンは夜間に閉じることでハウス内と外気の間に静止空気層を作り、放射冷却と対流による熱損失を低減します。二重被覆は単層に比べて断熱性能が高く、夜間の最低温度を安定させる効果が期待できますが、採光性の低下や結露の扱いに配慮が必要です。

導入の実務ポイント:内張り・二重被覆を採用する場合は、採光低下と結露のリスクを勘案し、作物別に昼夜の開閉運用ルールを決めること

施工面では裾の隙間を小さくする、連結部のシーリングを行う、支柱や開口部からの伝熱(構造材を通じた放熱)を点検して補修することが重要です。被覆材の寿命は素材と地域条件で変わりますが、一般的には3〜5年を目安に光学特性や破れの点検を行ってください(素材仕様はメーカー確認)。

2. 加温対策(必要なときに必要な熱を供給)

加温の選択肢には灯油・軽油・LPGなどの燃焼式ヒーター、電気ヒーターやヒートポンプ、温風ダクトによる遠隔加温などがあります。選定にあたっては「必要温度(作物別の目標)」「ハウスの熱損失」「稼働時間」「燃料・電気の入手性と単価」「安全性(換気・排気)」を比較検討します。小規模で短時間の凍結防止が目的なら灯油式の簡便ヒーターがコスト面で有効ですが、長期的な運用や大面積ではヒートポンプ等の効率的機器が経済的になる場合があります。

運用面ではゾーン暖房(区域ごとに加温)や夜間のみのオンオフ運転、外気温に連動した制御(サーモスタット、タイマー、ログ制御)を取り入れることで燃料消費を抑えられます。加温器は必ずメーカーの設置基準に従い、排気経路の確保・一酸化炭素検知器の設置・定期整備を実施してください。

安全注意燃焼式機器は不完全燃焼によるCO中毒や火災リスクがあるため、燃料保管の管理、換気計画、CO検知器の設置が必須です

3. 換気と湿度管理(結露と病害を抑える)

換気は単に温度を下げるためだけでなく、相対湿度を制御し結露・病害(カビ、灰色かび病など)の発生を抑える役割を果たします。日中は自然換気(側面の巻き上げ、天窓)や強制換気(送風機)で過昇温を防ぎ、換気の際は外気とハウス内の温度差を考慮して暴露ストレスを下げます。夜間は換気を絞って保温性を確保する一方、湿度が過剰になる場合は短時間の換気や除湿器の併用を検討します。

管理目標としては相対湿度を一般に50〜80%の範囲に維持することが推奨されますが、作物や生育段階により最適範囲は異なります。多湿状態が続くと病害が発生しやすくなるため、送風で葉面を乾かす、透湿性被覆材を選ぶ、床面の水はけを良くするなどの対策を併用してください。

4. 結露対策(被害の未然防止)

結露は病害だけでなく被覆材の早期劣化や採光低下を招きます。抑制策としては、被覆の内側へ温かい空気を送り込むことで表面温度を上げる、透湿性の高い内張り材を用いる、循環扇で空気を混合して水滴形成を防ぐ、夜間の表面温度低下を防ぐ断熱化を実施することが挙げられます。特に二重被覆時は被覆間の換気または透湿性を確保し、被覆同士の張り付き(スティッキング)を防ぐ設計が重要です。

5. 雪対策と構造管理(積雪地域での設計と運用)

積雪地域では骨組みの耐雪性能と除雪計画が経営の安定性に直結します。ハウス設計段階で地域の最大積雪量を考慮した耐荷重を選定し、積雪時には速やかに除雪する手順を確立してください。除雪用の安全器具や高所作業の安全管理、支柱とビニールのテンション点検、雪による損傷箇所の早期補修は必須です。耐雪型の骨組みやアーチ形状の採用は積雪の自走落下を促す設計上の工夫として有効です。

6. 実務チェックリスト(季節前/冬期運用)

  • 被覆材の破れ・隙間・汚れの点検と補修
  • 内張りカーテン、断熱シートの展開と可動部の動作確認
  • 温湿度センサー・CO検知器・サーモスタットの動作確認と校正
  • 加温機器の燃料供給ルートと保管場所の安全確認
  • 循環扇・送風ダクトの清掃と適切な配置確認
  • 雪が予想される地域では除雪計画の周知と機材準備

優先順位まずは「被覆の気密化」と「温湿度の計測体制」を整え、それから断熱強化や加温設備の導入を段階的に進めると費用対効果が高くなります

7. 費用対効果と運用の考え方

対策の選定は初期投資とランニングコストの両面で評価する必要があります。断熱化は比較的低コストで長期的に効果が見込める一方、加温機器は初期投資と運転費用がかかります。燃料価格の変動や気象条件を想定した運転シミュレーション(年間燃料消費量×単価の試算)を行い、投資回収期間を評価してください。省エネ補助金や自治体の支援制度を利用できる場合もあるため、導入前に確認することを推奨します。

(出典:農林水産省「施設園芸における省エネルギー対策マニュアル」および気象庁の過去気象データ)農林水産省マニュアル気象庁 過去気象データ

ビニールハウス冬の温度まとめ

  • 日中の太陽熱でハウス内は急速に温まり夜間で急降下しやすい傾向がある
  • 作物ごとの生育適温を確認してハウス内の管理目標を設定することが重要である
  • 複数箇所で温度を計測し成長点付近の温度を優先して管理する習慣をつける
  • 温度ムラは循環扇や温風ダクトで空気を撹拌して解消することが効果的である
  • 内張りカーテンや断熱シートは夜間の放熱を抑え暖房費削減に寄与する効果がある
  • 灯油式ヒーターは即効性が高く設置と燃料管理を適切に行う必要がある
  • 自作暖房は初期費用は抑えられるが安全性と信頼性の点で慎重な検討が必要である
  • 省エネ運用は導入コストとランニングコストの両面で総合評価して決めるべきである
  • いちごなど高設栽培は地温が確保されにくく空気温度をやや高めにする必要がある
  • 結露管理や換気を怠ると病害が発生し品質低下や収量減につながるおそれがある
  • 地域の霜発生時期を気象庁データで確認し事前に保温対策を準備することが肝要である
  • 複合的な対策(保温+加温+換気)を組み合わせることで効率的な運用が可能になる
  • 機器や資材を選ぶ際はメーカーや公的資料の仕様・注意事項を必ず参照すること
  • 定期点検と記録で運用改善のサイクルを回し燃料と電力の無駄を減らすことができる
  • 省エネ対策は作物特性、ハウス規模、予算を踏まえて段階的に導入するのが現実的である

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参考
 

 

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